【新装版】BAD BOYS
聞いてきたから答えだけなのに、「うるさい」って……
いや、ただ照れてるだけか。背けたままの頰が心なしか赤いし、ちらっとこっちを見て、目があったらすぐそらすし。
「……あ。そういえば、染にお金返してない」
はなびが思い出したようにそれを口に出したのは、駅についたときで。
電車代ぐらい出すと言ったのに意固地なお姫様はそれを断って、カードにしっかりチャージしていた。
「ん? なんか借りたの?」
「……椿のことで学校抜けた時に、電車代借りたの。
次に会ったら返そうと思ってたんだけど、忘れてた」
「……ああ、ね。
いいよ、俺が払っといてやるから。そもそも学校抜けてきた理由も俺なんだし。……っていうか、学校抜けてそのあと大丈夫だったのか?」
改札を抜けてホームを歩きながら尋ねれば、困ったような笑みを浮かべるはなび。
大丈夫じゃなかったんだな。……いや、大丈夫な方がおかしいもんな。
「桃と杏子が誤魔化してくれてたんだけど……
次の日、一応生徒指導の先生に事情を聞かれて、」
「……うん」
「ある程度正直に答えたら、やっぱり怒られたんだけど。
話しながら色々思い出して泣いちゃって、今回は厳重注意だけで見逃してくれた」
「……よかったな」
何もよくはねえけど。
ごめんなと繋いでいない方の手で頭を撫でたら、はなびがほんのわずかに俺に身を寄せた。
「……いいよ、寄りかかってな」
俺らが向かうのは、街がある方とは反対方向。
向こう側に比べて人は少ないほうだけど、やっぱり都会の夏休み。人は多いし、車内の乗車率もそこそこだ。