【新装版】BAD BOYS



つないだままの手を引き寄せ、はなびを抱き寄せるようにして寄りかからせる。

俺らが恋人同士じゃないなんて、誰も気づかないんだろう。女の子から視線を向けられたけど、5人で出かけた時ほど気にはならない。



それどころか。



「……はなび、苦しくない?」



「うん、平気」



「ん、それならよかった」



はなびに向けられる男の視線の方が気になる、とは言わねえけど。

なんとなく癪で、わざと見せつけるように髪を撫でておいた。囁くようにして話してたら、「近い」と文句を言うはなび。



「嫌だ?」って聞いたら「恥ずかしい」って赤い顔のはなびを見て、俺がやめなかったことは言わなくともわかるだろう。

そんなかわいい顔されたらいじめたくなる。




「もう、お客さん減ったから……」



「ん」



でもあんまりいじめたら、嫌がるだろうし。

乗客が少なくなったところで距離をつくると、はなびはあからさまにほっとする。そんなにほっとされたら何となくむかつくんだけど、まあいい。



「……どこまで乗るの?」



「終点」



「終点とか、わたし降りたことないかも……」



俺も、何回も行ったことがあるわけじゃないけど。

昔先代に連れて行ってもらって、はじめて知った場所だ。親が離婚するって話が出た時は、一度だけひとりで行ったのを覚えてる。



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