【新装版】BAD BOYS
終点に近づくに連れて、人の数はとても少なくなって。
降りた終点は至って普通の駅だけど、改札を抜けて外へ出ればはなびが一瞬目を見張る。ある意味予想通りの反応だな、と思いながら。
「……なんか、見慣れてないから新鮮ね」
つぶやく彼女に、口角が上がる。
普段見慣れた景色とは真逆の、ビルも高い建物もない場所。言ってしまうなら田舎。それっぽくない駅から出た時の反応は、はじめて連れてきてもらった時の俺と同じだった。
「……それで、どこ行くの?」
「ん? 海行こうと思って」
「海……? 地元にもあるのに?」
首をかしげる彼女の手を引いて、のんびりと歩く。
田舎の方が、都会よりもゆったりと時間の流れが過ぎていくような気がするのに。進んでいく時間のはやさは同じで。
どこにいても、俺がはなびと今日一緒にいられる時間は変わらず減っていく。
「こっちの方が景色綺麗だし……
あと、ここの海遊泳禁止なんだよ。波荒いから」
「……? そうなの?」
「そ。でも砂浜は散歩できるから」
大したデートプランは何も考えてない。
ただ俺ははなびと一緒に過ごせたらそれでいいし、行き当たりばったりとか、そんなのでもよくて。笑顔でいてくれたら、十分。
「あ、ほんとだ。
地元にも泳げるところあるけど、こっちの方が砂も白くて綺麗ね」
近づくにつれて、徐々にはなびのテンションが上がっていくのがわかる。
道路沿いから砂浜に続く階段でサンダルを脱いで、裸足で先におりていく彼女。