【新装版】BAD BOYS
・nineteen
・
「はなび何がいい?」
「わたしデミグラスのオムライスがいい」
「ん。じゃあそれふたつで」
田舎、と言っても、おしゃれなお店はある。
海から上がってお昼食べようかと海岸沿いを歩いていたら、真っ白な外観と大きな窓のある可愛らしいカフェが1軒。
店の中から綺麗な海が見えるから、はなびはずっと窓の外を眺めていて。
そんな彼女を特に会話もなく眺めていたら、奥のカウンター席に座る若い男性に「カップル?」と話しかけられた。
「ふふ……、カップルでは、ないんですけど」
窓の外からその人へと視線を向けるはなび。
どうやらこの男性は常連客らしい。いい感じに日焼けした人だなと思っていれば、この先をもう少し行った海岸は、遊泳しても良い海水浴場らしく。
「向こうの方にも店はあるんだけどね。
あっちだと人多いから今の季節は落ち着かないし、ここでいつも昼済ませてからサーフィンしに行くんだよ」
……ああ、似合うな。
サーフィンできますって言われても、何の違和感もない。むしろ「ああやっぱり」ぐらいの調子だ。はなびも思ったことは同じだったらしい。
「素敵ですね、サーフィン。
やってみたいとは思わないですけど……見てるのはかっこいいなって」
「はは、彼氏くんいいの?
一緒にいるのにほかの男のこと「かっこいい」って褒めてるけど」
「……さっき付き合ってないって否定したんですけどね」
言いながら、手を伸ばして。
はなびの髪に触れれば、潮風をはらんだせいか綺麗な髪は絡んでしまっていた。それをそっと指で梳いて直してやっていたら。
「……これは片想いだなー」