【新装版】BAD BOYS
「すみれはケーキ食べた?」
「うんっ、いちごのしょーとけーき!」
「ふ、そっか。じゃあ俺も食べようかな」
すみれをおろしてからソファの端にバッグを乗せて、洗面所に入る。
水の流れる音の間で「ただいま」を扉越しに言えば、風呂の中から母さんが「おかえり」を返してくれた。
手を洗ってからリビングに戻れば、「おにいちゃんだっこー」と強請ってくるすみれ。
……すみれを抱っこしてたら、片腕が使えないんだよな。
「ん、おいで」
でも、かわいすぎる妹を突き放せるわけがない。
キッチンに足を踏み入れて、「すみれ冷蔵庫開けて?」とお願いする。
「はぁい」と返事して開けてくれた冷蔵庫からケーキの箱を取り出して、また閉めてもらってからリビングに引き返した。
そこでようやくすみれが離れてくれたから、お皿とフォークの準備をして箱を開ける。
残っているのは俺が好きなフルーツのタルトだけで、どうやら3人は先に食べたらしい。
食べようとタルトにフォークを入れていたら、膝に乗りに来るすみれ。いつものことだけど、すみれは基本的に俺にべったりだ。
たまり場行ったり遊びに行ったり買い物行ったり、と。
普段は休日ですら家にいない俺。だけどめずらしく予定がないから、と家にいれば、1日こうやって俺に甘えてくる。
「いちご、ほしい」
「……いちご?
んー、すみれもう歯磨きした?」
「したよ……?」
俺の膝の上で振り返って、こてんと首をかしげるすみれ。
かわいい。我が妹、めちゃくちゃかわいい。