【新装版】BAD BOYS



「はなび、夏休み空いてる?」



「え? うん、まだ何日か空いてるけど」



「なら、デートしようか」



まるで、好きだよと囁くみたいに。

穏やかに愛を告げるような口調で誘ってくる彼に、ふっと笑みをこぼして「うん」と頷く。



手を差し出してくれたのはいいけど、自分から繋ぐのはちょっとだけ恥ずかしいから、手を重ねるだけ。

それをわかったようにぎゅっと握ってくれた彼の手を握り返すと、椿は満足そうに口角をあげるから、ちょっと意地悪なその表情にもドキッとした。



「前に、花火見に行こうって言ってたじゃん。

あれ、8月にやるから一緒に行こ。デート」



毎年行われる、地元の花火大会。

海辺で上がるからたまり場の前からよく見えて、みんなでガレージの前に大きなシートを敷いて花火を見るのが恒例だったそれ。




だけど、今年は椿と、ふたり……で。



「……あ、じゃあ、浴衣着ようかな」



付き合う、ってことを意識すると、なんだか途端に恥ずかしくなってしまう。

その気恥ずかしさを逃すように、あえて当たり障りのない言葉を吐いた。



「せっかくプレゼントしてもらったし……

着る機会、そんなに頻繁にはないと思うから」



「5人からのプレゼントなのに、

実際着てんのを見られるのは俺だけか」



ちょっと悪いな、って言ってるけど。

どう考えたって悪いと思ってる顔じゃない。嬉しそうだもの。「ひとりじめしていい?」って甘い声が、わたしの思考をおかしくしそうなほど。



「……、じゃあ、わたしにも。

椿のこと、ひとりじめ、させてくれる?」



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