【新装版】BAD BOYS
熱を孕んだ風が、夏を知らせる。
今のはちょっと太陽の熱に浮かされすぎたかな、と。言ってから恥ずかしくなってちらっと横を盗み見たら、椿の顔が赤く染まっていた。
「……え」
「うるさい。見るな」
何も言ってないのに。
ふいっと顔を背けた椿が、空いている方の手で口元を覆っているのが見える。……照れてる?
「……赤くなるようなこと、言ってない」
「うるさい。
……はなびにそういうこと言われたら、俺だってドキッとするし。不意打ちやめて」
不意打ちって……普通に会話しただけなのに。
そもそも糖度高めな会話をはじめたのは椿の方で、わたしは同じ言葉を返しただけだ。なのに、ドキッとするとか言われても。
「……花火見に行くの、楽しみにしてる、から」
「……ん」
「ほかにも空いてる日、あとで言うね」
「……うん」
わたしの方がドキドキさせられてること、椿は気づいてないんだろうか。
無意識でも自覚ありでもタチが悪いけど。ノアとの間にはすっかりなくなってしまっていたこの気恥ずかしさがちょっとうれしい。
「あとで……ノアの家に、
置いてある荷物取りに行かなきゃ」
ああそうだ、と思い出したことを小さくつぶやけば、つないだままの手をくっと引かれて。
ん?と顔を上げると、その瞬間にくちびるに触れるのは彼の吐息。