【新装版】BAD BOYS



「待っ、ここ道路……!

っていうかもうそこにたまり場見えて……っ」



まだ付き合ってることを言いたくないと言ったのは、椿の方なのに。

慌てて支離滅裂に言葉を吐くわたしに、「はなび」と冷静な彼。じっとブラウンの瞳を探るように見つめれば、椿はまたふいっと顔を背けた。



「……あんまり、あの人の名前、ださないで」



……どうしよう。かわいい。

拗ねたような横顔がかわいくて、つい頰がゆるんでしまう。人はいないけど道路上でキスされたことなんて、すっかり頭から飛んでしまった。



「ごめんね。

でも荷物取りに行かなきゃいけないし、お世話になったのは本当だから、直接お礼が言いたいの」



「……一緒に行く」



ぼそっと呟いた椿に、「なら一緒に行こうね」と約束する。

ノアに対してヤキモチを妬いて、こんな風に椿が子どもっぽくなってしまうなら。それも悪くないんだけどな、と不純なことを考えつつ。




「ほら、みんな待ってるから行こう?」



なだめれば、彼が何か言いかける。だけど結局何も言わずに歩き出した。

だからわたしもそれ以上は何も言わずに、椿の隣を歩く。



たまり場がそこだからとお互いに自然と離した手が、ほんのすこしだけ寂しい。



「おはよ。ただいま」



平然と、先に入っていく椿。

続くようにして中に入れば「おかえり」と優しい声をかけられて。案の定いちばんにわたしたちの元へとやってきたのは、芹だった。



「お前な……!絶対ダメだったんだろ、って俺ら気ぃ遣って連絡しなかったっつーのに……!

なに仲良くはなびと一緒に来てんだよ!」



「……いや、俺はなびと行くって言ったじゃん」



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