【新装版】BAD BOYS
「そんなこと知ってんだよ!」と。
椿に盛大に絡みに行く芹を見て、誰よりも心配してたんだろうなと思う。芹は椿のことが大好きだから。……まあ椿も芹のこと好きだろうけど。
「芹、
わたしに椿を取られて悔しいだけでしょ?」
「んなこと言ってねーよおめでたい頭だな」
芹に捕まって。
ぐりぐりと頭を押してくるから「痛い」と反論すれば、芹の手を引き剥がしてくれたのは椿で。
「うざ絡みしすぎ」
「ああん?お前ただ単にはなびに触られたくねーだけだろ。
コイツの彼氏がそばにいねーんだから、」
いや、椿と付き合ってるんです。そばにいます。
……とは、さすがに言えない。それに昨日ノアと別れて昨日椿と付き合ってる、というのも、なんだか軽いみたいでわたしも言いたくないし。
「ノアとは昨日別れたから、」
「……は? まじで?」
「うん。だからもどってきたんだけど、」
「そういうことだから触んないで。
俺いまはなびのこと口説いてる途中だから」
……よく言う。
実際は優越感に浸って楽しんでるくせに。
ぽかんとした芹を置いて、椿に手を引かれて階段をのぼる。
ハッとしたように「おい椿!」と彼が追いかけてきたけれど。
動じることもなく、飄々としている椿。
なんとなくわたしの方が怖気づいてしまいそうになるこの状況はなんなんだろう。