【新装版】BAD BOYS
「お前別れたのかよ?」
椿がどう足掻いてもそれについては言及しないことを知ったらしい。
2階のソファにすすめられて腰を下ろすと「おかえり」を3人からもらって、「ただいま」を返す。追いかけてきた芹が、疲れたようにソファに沈んだ。
「……別れた」
「……ノアさん浮気してたの? はなび」
「ううん……
千秋さんはノアの奥さんじゃなくて、ノアのお兄さんの奥さん。のいちゃんはそのふたりの娘」
だからわたしとは浮気じゃないの、と。
納得できないところもあるだろうけどざっくり伝えれば、「そっか」と珠紀はそれだけで済ませてくれる。そして。
「そうそう、」と。
何かを思い出したように、わたしを見る。
「……俺の彼女がはなびに会いたがってて、」
「……え、珠紀の彼女が?」
「うん。中学の時に引きこもってたから、自分から誰かと関わろうとする子じゃないんだよね。
……だから自分から関わりたいって言われたら、俺もだめとは言えないでしょ」
そう言う珠紀の左手に薬指には指輪が輝く。彼女のことを本当に大事にしているらしい。
「もちろん」とそれを了承すれば、珠紀は染に「たまり場連れてきていい?」と許可を取っていた。
「……みんなも珠紀の彼女と知り合いなの?」
「ぼくと芹ちゃんは、同じ学校だから知ってるよー。
染ちゃんとつーちゃんは会うのはじめてだよね、写真は見たことあると思うけどー」
へえ、と。相槌を打って、なぜか穂に渡されたチョコレートをお礼を言って受け取る。
もぐもぐと咀嚼していれば、これまた何故か芹に「写真見せてやろーか?」と聞かれたけれど。