【新装版】BAD BOYS
そう言ってくれたのは昨日の話だ。それを思い出して告げたわたしの話を聞いて、穂が「つーちゃんさぁ」とニヤニヤ笑みを浮かべる。
これは……確実に揶揄うときの笑みだ。
「好感度これでもかってぐらい上げようとしてるよねー。
完全に立場がはなちゃんの彼氏だよー?」
「……わざとだよ。
それぐらいしとかねえと、余計な虫がいっぱい寄ってくるからな」
「余計な虫って……」
穂の話を軽く流して、話の矛先をわたしへと向ける椿。
大丈夫と否定すると、彼は何か言いかけた。けれど珠紀が先に「急だけど明日とかどう?」と尋ねてきたことで、結局その言葉の続きはうやむやになる。
「明日? うん、平気」
そう返して、あっさりと決まる約束。
椿と穂と芹の3人が楽しそうにじゃれて、時々珠紀を巻き込んで。昔から変わらない仲の良さが微笑ましい。
「椿さん~!ちょっと来てください!」
「え~、なんか個人指名されたんだけど」
やだな、とか文句を零しながらも、階段をおりていく椿。
何気なくその光景を見送っていたら、芹が声をひそめてわたしの名前を呼んだ。
「あいつ、いいヤツだし。
……お前のこと、本気で大事に思ってるから。あいつの気持ち、ちゃんと考えてやって」
「……芹」
「まあ、仲間だと思ってたヤツにいきなり告白されても困るだろーけどよ。
椿ほどお前のこと好きなヤツいねーから」
な?と。わたしの顔を覗く彼に、こくんと頷く。
椿本人から直接気持ちを聞かされるのも嬉しい。だけどまわりのみんなが、わたしの知らない椿が想ってくれていることを教えてくれるのは、余計に嬉しい。