【新装版】BAD BOYS



好きに、なると思う。

こんなにもわたしだけを想ってくれる人なんて、椿以外にはいないから。ノアはわたしのことを大事にしてくれるけれど、彼の大切なものはわたしだけじゃない。



「はあ?

好きな女の口説き方ぐらい自分で考えろよ……!」



階下から聞こえてくる椿の声。

どうやら個人指名の内容はこれだったようだ。



「だって椿さん百戦錬磨じゃないっすか」



「お前俺に喧嘩売ってんの?

俺はなびのこと口説いてる途中だって言ってるよな?」



「……健気ですよね」



……後輩にまで健気って言われちゃってるし。

だけど一度は「もう関わらない」とまで言ったわたしのことを4年も想ってくれていたなんて、本当に健気としか言いようがない。




「……いや、別に健気じゃねえだろ。

あっさり諦められるんだったら、それ絶対本気じゃねえし」



「、」



「健気でも一途でもなくて。

俺はただはなびに本気なだけだよ」



「……だってさ、はなび」



ちらっと。

わたしを見てくる珠紀に言われなくても、彼の言葉はしっかりとわたしの頭の中に入った。ぐるぐると脳内をループして、甘く痺れを起こす。



「椿ー。

はなびが顔赤くして固まってんぞ」



「っ、ちょっと芹……っ」



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