【新装版】BAD BOYS



彼を引き止めたところでもう遅い。

用事はすんなり済んだのか2階へともどってきた椿に、ばっちり赤い顔を見られるという悲劇。



「いまさら赤くなってんの?

俺結構な頻度で口説いてんのにな」



「う、るさい」



「照れる時のボキャブラリーの無さどうした」



誰のせいだと思ってるんだ、というのはすべて八つ当たり。

近寄ってきた椿がよしよしと頭を撫でてくるのは子ども扱いだとわかっているのに、熱を帯びたままの頬。俯く顔が熱い。



「はなび」



「っ……」




甘い声で名前を呼ばれて、椿がどんな顔をしているのか、手に取るようにわかるのに。

びりびり痺れた脳内で、どこか不具合が生じたらしい。たまらなく椿の表情が見たくなって、ちらりと視線を持ち上げてみれば。



「かわい、」



「っ……!」



予想通りの表情だけでも既に充分甘いのに、ゆるく目を細めた姿がどうしようもなく甘い。

焦がされそうになる。



「そんな顔されると、キスしたくなるんだけど」



「だ、だめ……っ」



皆無に等しい抵抗。

椿のすべてに惹き付けられて、まだ好きじゃない、なんてそんな言葉、通用しないくらいに揺らされる。──あまりにも的確すぎて、目眩がする。



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