【新装版】BAD BOYS
だめだと拒むくせに、熱い頬に触れる指先が心地良くて。
絡む視線にも内側の熱を上げられるほど。なのに自ら触れたくなるなんて、ほんとにどうかしてる。
「その顔は、"だめ"じゃねえだろ?」
ずるい。
その口調に切り替えれば、わたしが一切何も言えなくなるのをわかってて。それでもって、わたしに求めさせようとする。あまりにもずるくて優しい。
「はなび、」
「……いつまでやるんだ、それ。
はなびが機能停止してるぞ」
甘さに侵食された脳内に、ようやく酸素を取り込めた気がした。
聞こえた声に、ここがどこだったのか思い出して我に返る。周りにみんないるんだけど……!
どう足掻いてもこれは恥ずかしい。
椿に流されそうになったことも、みんながいるのを忘れていたことも。
「染。邪魔なんて野暮なことするんじゃねえよ」
「はなびが困ってたから助けてやっただけだよ」
ゆるゆると手で顔を覆って、「大丈夫か?」って苦笑しながら尋ねてくる幼なじみに頷く。
ぽんぽんと頭を撫でてくれる染を、椿がどことなく恨めしそうに睨んだ。
「触んなよ」
「口説いてる途中、なんだろ?」
「ああそうだよ」
言うが早いか、染の手をあっさり払う椿。
染も染で文句を言う気はないようだったけれど、代わりにわたしの頭を撫でた椿のことを、じっと見つめた。