【新装版】BAD BOYS
本当は先に風呂に入りたかったけど、両親に「おやすみ」を言ったすみれを連れて部屋に上がる。
一緒に寝て、と駄々をこねられたらどうしようかと思っていたけど、そばにいるだけでご満悦らしい。ふわふわとやわらかい髪を、そっと撫でた。
「おにいちゃん、すみれのこと、すき?」
「……だいすきだよ。
ちゃんとそばにいてやるから、はやく寝な」
もう遅いだろ?って、優しくなだめて。
髪を撫でているのとは反対の空いた手を握ったすみれは、「おやすみなさい」を言って、ようやく寝付く。
深い眠りにいるのを確認してから着替えを持って下におりると、なぜか父さんと母さんが同時に俺を見た。
なに?と首をかしげれば、母さんがふっと笑みをこぼして。
「すみれ、しあわせそうに笑ってたでしょ?
最近お兄ちゃんに構ってもらえないって拗ねてたのよ」
俺は別に、優等生じゃないから。日付が変わる前後まで遊び歩いてることなんてザラで。朝帰りしないだけマシ、といったところだ。
帰ってきたときには当然すみれは寝ているし、朝ぐらいしか顔を合わせない。
ここ最近は何があったわけでもねえけど、夜中まで帰ってこない日が多かった。
だから、ただ単にすみれは寂しかったらしい。
今日はやけに甘えただったし、この時間まですみれが起きているのに両親が何か言わないのもめずらしいし。
何かあるんだろうな、とは、思ってたけど。「すみれのことすき?」って聞いてきたのも、それが原因か。
「椿もはやく寝なさいね。おやすみ」
「ん、おやすみ」
ふたりで寝室に行く両親を見て、相変わらず仲良いなと小さく笑った。
俺が『花舞ゆ』にいることも、夜中まで帰ってこないことも、女の子と遊んでいることも。知っているけど、ふたりとも俺には何も言わない。
前に一度だけ、何気なく問うたことがあるけれど。
「椿の行動に、正解も不正解もつけられる人はいないから好きなようにしなさい。でも、悪いと思うことは絶対にしないこと」と言われただけだった。
その考え方が正解だって思うから、俺は言われた通りにちゃんと守ってる。