【新装版】BAD BOYS
「んー、すみれも好きよ。
かわいいすみれちゃんに、ぴったりね」
「えへへっ。
すみれもね、すみれのお花すきー」
「ふふ。好きな花……、
そうね……椿のお花も、好きよ?」
ぴた、と。思わず手が止まる。
落ち着け俺。はなびが言ったのは、好きな花の話であって俺のことじゃない。惑わされたら負けだ。
「つばき?
おにーちゃんのお名前といっしょ!」
「ふふ、そうね」
お皿に開けたお菓子とグラスに注いだジュースを、リビングのテーブルに運ぶ。
テーブルに置かれたはなびのスマホには椿の花の写真が表示されていて、すみれがそれを見ながら絵を描いていた。
「……すみれはいつまではなびの膝に乗ってんの。
ほら、膝の上座りたいならこっちおいで」
「やだー。おねーちゃんがいい」
スケッチブックに集中して、俺を見ることもなく吐き捨てるすみれ。
はあ、とため息をつく俺に対してはなびもくすくす笑ってるだけ。……普段は「おにーちゃん」って、俺にべったりなくせに。
「お姉ちゃんお勉強するんだって。
だからすみれは邪魔しないで隣座ってな」
言えばすみれは、仕方なさそうに「はーい」とはなびの膝からおりる。
俺が言った手前、はなびはバッグから課題を取り出していて。俺もやるかな、と課題を取りに部屋へ上がる。
最近の俺はめちゃくちゃ真面目だと思う。
黒髪じゃねえから染めてんのはバレてるだろうけど、一応模範内なのか怒られることねえし。実はカラコンも、控えめなブルーに変えた。
全く褒められたことじゃねえんだけど、課題提出なんて中学の頃からまともにした覚えがない。いっつも単位ギリだし。
……なのに今まともにやってる理由が彼女ができたから、って。我ながら俺らしくないな、ほんとに。