【新装版】BAD BOYS



そうやって、すぐに俺を調子に乗らせる。

わかってるくせに簡単に乗せられるから、ほんとに、どうしようもない。



「……っ、椿、」



「しー。……すみれ起きるから」



静かにして、と。

絵を描き上げて絵本を広げていたすみれがリビングで眠ったのをいいことに、はなびに迫る。昨日泣かせた分まで、今日は優しく甘やかしてやりたいだけ。



本当は進路の話をしたそのタイミングでキスしたかったのを我慢して、別にしたくもない勉強してたんだから。

すみれの昼寝の時間まで待った俺を褒めてくれてもいいと思う。



「っ、」



赤らんだ頬と、頼りなく下がった眉。

それでも嫌じゃないのか、キスすること自体をはなびが拒むことはない。潤んだ瞳が、余計に俺を煽る。




「……嫌じゃないって昨日言ってただろ?」



「言った、けど……」



「嬉しいんじゃなかった?」



くちびるまでの距離を、少しずつ詰める。

触れる直前のところで甘く囁いたら、ぴくりと揺れるはなびの肩。真っ赤な頬を撫でて強制的に視線を合わせてから、くちびるを奪う。



まだ俺とのキスに慣れなくて拙い応え方も。

恥ずかしそうな表情も、弱々しく俺の服を握る姿もひたすらに好きで。キスの隙間に漏れる声が、俺にはなびを求めさせる。



「あ、ごめん。……邪魔した?」



ふと冷静になったのは、リビングの扉が開いて声が聞こえた瞬間。

さすがにそれには俺も驚いてはなびから離れると、「ごめんね」と父さんが申し訳なさそうに謝った。



< 323 / 463 >

この作品をシェア

pagetop