【新装版】BAD BOYS
「あの八王子って男のことなんだけど。
……椿とはなびが来てない間に、また向こう側と色々話はしたんだよね。だから毎日のように顔合わせてて、お互いに個人の事情には触れなかったけど、」
ふっと、珠紀がため息を落とす。
彼らしくないその姿が、どうしてか息苦しかった。
「……この間あいつが言った通り。
俺は、みやと付き合うのを反対されてる」
「……うん」
「シンプルなもんだよ。
『みやに釣り合わないから』ってただそれだけの理由。釣り合うとか釣り合わないとかどうでもいいっていうのは、話が通じないから言うだけ無駄」
その言葉を聞いて、一瞬どきりとする。
残念なことに、わたしも珠紀のその話を、決して他人事だとは思えない理由があった。
わたしはまだ、両親に話していない。
ノアと別れて、今度は椿と付き合っていることを。
「でも俺は別れる気はないし、みやもそう。
……だから正直な話、油断してたんだけど、」
はあ、と深いため息。
珠紀の瞳の中で、哀情がひどく色濃くなる。
「……俺が『みやは中学の時に引きこもってた』って言ったの覚えてる?」
「……うん、」
覚えてる。
だから、自分から誰かに会いたいなんて言うのはめずらしくて、わたしに会いたいと言ったみやちゃんの望みを叶えようとしてくれたんだから。
「……あれ、違ったんだってさ」
「え?」