【新装版】BAD BOYS
違うって、何が?
どこかで歯車が、本来噛み合ってはいけない場所で噛み合って、回ってしまっている。噛み合ってるように見えるのに、実際は噛み合ってない。
噛み合わなければ、何かがおかしいことに気づけるはずなのに。
噛み合っているように見えるから、その間違いにすら気づいてあげられない。
「……『身体の弱いいとこに付きっ切り』」
ハッと、息を呑む。
言われなくてもわかるその続きを読み取ろうと顔を上げたら、珠紀は自分の髪をくしゃっと握って乱した。……かける言葉が、見つからない。
「まあ、弱いって言っても最近はすっかり回復してるみたいだけど……
それまでずっと入院してたのが、みやが中1の頃にようやく自宅で暮らせるぐらい良くなって。でも何かあったら困るからってずっと付きっ切りで、そばにいて、」
「、」
「みやが中2の時には、普通に生活できるぐらいには元気になった。
……中学は通ってないはずなのに今普通に朔摩に通ってるってところを考えると、元々頭良いんだろうね」
普段の珠紀からはありえないほど矢継ぎ早に、告げられていく事実。
現実を受け止めきれてないから。受け止めようとして、でもまだ戸惑って。
「だから1個年下のみやは中3のとき、普通に学校に通い始めたいとこに合わせて、学校に行けたはずなのに。
2年行かなかったから周りの目を気にして行けなかったんだって。……実質引きこもってたのは最後の1年だけ」
「、」
「……『疑われるようなことは何もなかったよ』って、みやに言われたんだけどさ。
いや、疑うとかそういうのじゃなくて……嫉妬、とも、違うじゃん。いとこだし、そこにどうしようもないこととか、あったんだろうけど、」
どうしてみやちゃんがマヤのそばに付きっ切りでいる必要があったのか、とか。
良くなってるならそんなの必要なかったんじゃないのか、とか。
色々思うけど、何をどう慰めたとしても、珠紀の望む答えにはならない。
何よりも、「みやが学校に行ってなかったのは俺が原因だよ」とマヤが余計なことを言わなかったら何も知らなかった自分が、一番許せないみたいだった。
髪を握ったままの手にまだお揃いのリングがあるから、余計に哀しい。