【新装版】BAD BOYS
珠紀は珠紀でそれ以上は何もなくて、本来抱き合うという関係に生じてくるものが、わたしと珠紀の間にはない。
こういう時、甘えるのにはうってつけの相手。
「……みやちゃんになんて言ってきたの?」
「………」
「珠紀?」
「……『これ以上付き合ってられない』って」
ぼそっと。
聞こえるか聞こえないかの声で言う珠紀。この人もどうやら、好きな子に対してはとても不器用らしい。……椿と一緒だ。
傷つける、という彼の行動の裏に何にも変えられない感情があること。
珠紀を抱きしめている今なら、椿のすこし前の行動も納得できる。
「……なら、仲直りしなきゃ」
「ん……」
「わたしから電話する?」
「いや……いいよ。自分で電話する」
珠紀が、わたしからゆっくりと離れる。
感情は随分と落ち着いたようで、スマホを取り出した彼は電話をかけ始めて。繋がったと同時に、「みや?」と彼が名前を呼ぶ。
うっすら聞こえてくる電話越しの声。
どうやら電話越しでみやちゃんが泣き崩れているらしく、困ったように珠紀は「ごめん」って謝ってるけど。
……何このデジャヴ。数日前に同じようなことがあった気がする。
気がするっていうか、あった。わたしの場合は自分で電話したけど、そういえばわたしも泣いてた。