【新装版】BAD BOYS



……一体どこまで椿は信頼されてないんだろう。

何も、といってもキスまではされてるわけだから、「キス止まり」って小さく告げたら、彼は驚いた表情を隠そうともしない。



いや、なんでわたし珠紀とこんな話しなきゃいけないの?

これ普通に恥ずかしいんですけど?



「……だってそろそろ10日ぐらい経つんでしょ?

出会って数時間で関係結ぶような椿がそんなに我慢してるなんてありえないんだけど」



「なにその信頼のなさ。

っていうか椿のそういう相手って、彼女じゃなくてお互いに遊びの関係でしょ?」



わたしからすれば「まだ10日」なのに、どうやら珠紀の中での椿のイメージはそうじゃないらしい。

一体わたしが離れている間に、彼はどれだけ遊んできたんだろう。



「いやでも、元カノ……あ、」



絡んだ視線が、逃げるように逸らされる。

けれどしっかりと聞こえた言葉を、すでにわたしのくちびるははっきりと反芻していた。




「元カノ?」



「………」



「ねえ今元カノって言ったわよね?」



「……俺椿に殺されるんじゃないかな」



物騒な。

さすがにそこまでするわけないでしょ、と眉間を寄せるわたしに対して、「椿に、話したこと内緒にしてよ?」と、前置きした彼は。



「椿の……初の、相手、いたでしょ。

中学のときの、先輩。覚えてない?」



……ああ、いたわね。

人より早く大人の階段をあっけなく上ってしまった椿の、そのハジメテをいただきましたって、語尾にハートマークをつけそうなテンションでわたしに自慢してきた先輩。



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