【新装版】BAD BOYS
「その先輩は、当然先に卒業したでしょ。
……でも去年、何かの拍子に再会したみたいで。ほんとに短い間だけど付き合ってたんだよね、あいつと先輩」
「……へえ」
「付き合ってたって言っても、デートとか何もしてないし……
いっそそういう関係だって言っても変わんない相手だったんだけど、」
「………」
「……別れた今も、未だに連絡取ってるっぽいよ」
気まずそうに。
告げる珠紀の前で思いっきりため息を吐けば、彼は「怒んないでよ?」とわたしを見る。別に珠紀には怒ってない。いや、椿にも怒ってない。
『花舞ゆ』を離れる前から、椿のその女関係のだらしなさといえばもう、それはそれはお墨付きなもので。
誰よりも遊んでるのが、椿だったわけだけど。
「……つまり。
わたしと付き合ってるけど欲の発散は別の女でしてると?」
「うん、怒ってるよねはなび」
それを知ってた昔と、付き合った今じゃ訳が違う。
そもそも、仮にわたしが色々思ったところで、怒る資格はない。
好きと言うこともせず椿と付き合ってるのはわたしだし、そう考えたら椿に強引に好き勝手されるよりもお互い傷つかないで済むんだから。
……だから、べつに、怒ってなんか、ないけど。
「……、」
「……はやく椿に好きって言ってやれば?」
見透かすように言う珠紀と、黙り込むわたし。
それを否定しないのは、かなり前から薄々気づいていた感情が、最近になってもう随分と膨れ上がっていることを知っていたからだ。