【新装版】BAD BOYS
わかってる。
それはわかっているけれど、だ。
「わたしの両親は……
わたしがノアと結婚するものだって、信じて疑ってないのよ」
許嫁はマヤだけど。
実際にわたしと結婚するのはノアだって、信じて疑わない。だからノアと一緒に住む話をした時はとても安心してくれたし、まだ一緒に住んでると思ってる。
別れた話を、切り出せない。
「はなびさ……
それは結局ただ逃げてるだけじゃない?」
「、」
「まあ、前者はまだわかるとする。
……でもたとえば親が反対したとしても、ひとりじゃどうしようもないでしょ。俺は少なくとも、みやから聞いた時、素直に話してくれて安心したよ」
俺のこと信頼してくれてて、と。
付け足した珠紀が、そっとわたしの髪を撫でる。よく知る椿の撫で方よりも、とても繊細だった。
「反対されても、こうやって付き合ってるし。
反対されてるのに、俺の家に泊まるってみやに言わせて、『いい』って返事されてないのに、俺の家に泊まらせて次の日送っていくけど」
「……怒られないの?」
「あきらめてるから、みやの両親も『だめ』とは返事しないんでしょ。
……まあ、比較的反対が軽いのかもしんないけど」
それでも、と。
珠紀がわたしをまっすぐに見据える。
「言ってやらなきゃ伝わんないよ。
大丈夫。……あいつは馬鹿みたいに一途で、はなびを幸せにすること以外考えてない馬鹿だから」
結局それって、椿のことまったく褒めてないけど。
言いたいことは充分すぎるくらいに伝わってきて、ふっと頬をゆるめる。「うん」って頷いたわたしに、珠紀が満足そうに口角を上げた。