【新装版】BAD BOYS
「でもまあ、よかったじゃない。
明日の花火大会は好きなだけ楽しんでらっしゃい。何なら泊まりでもいいわよ」
「……どーも」
そんな予定ないけど。
まあそうなればいいな……とかちょっと不純なことを思いながら、風呂入ってくる、とリビングを一度離れる。
明日はデートの約束していた花火が上がる日で、天気予報は快晴。
午後まではいつも通りすみれの面倒を見て、母さんが帰ってきたらはなびをマンションまで迎えに行くことになってる。
すみれが「すみれもいっしょにいきたい」って甘えてきて、はなびがいいなら3人で、と思っていたけど。
さすがに両想い早々に、妹に邪魔されたくなくて。
「人多いし危ないからごめんな」ってそれっぽい理由であきらめさせた。
ごめんなお兄ちゃんが大人げなくて。
しょんぼりしてしまったすみれに、「今度一緒に手持ち花火しよっか」とはなびが声をかけて慰めていたけど。
……すでに家族公認ですね、はなびさん。
「……花火、か」
声をかけた時は、まさか付き合うことになるなんて思ってなかったのに。
何が起こるかわからないもんだな、と思う。……あと、俺がたまり場に行けない数日の間、ぴたりと連絡が止んで、誰ひとり連絡してこないのは何なんだ。
そろそろたまり場に行けるようになるし、俺ももう聞かないけど。
毎日のように連絡を取っていただけに、何もこない日が続くと違和感が凄い。
「連絡? うん、普通に来るわよ」
「……まじ?
俺にだけ意図的に来ないようになってんの?」
母さんが帰ってきてから家を出て、はなびのマンションにたどり着いたら、いつも時間に間に合わせる彼女がめずらしく準備を終えていなくて。
花火柄の浴衣に身を包んだ彼女に迎えられ、部屋に足を踏み入れたところで。
メイクを終えていつも以上に可愛らしいはなびの髪に櫛を通しながら尋ねれば、いまの返事。
……なんで俺だけ連絡避けられてんだ。