【新装版】BAD BOYS
「今日も『たまり場に花火見に来んの?』って芹から連絡来てたわよ。
今年は椿とふたりで見に行く、って返したけど」
「……付き合ってることバレそうだな」
「うん、もうバレてると思うわよ」
別に深い意味はないし、いいんだけど。
櫛で梳くたびに、極彩色の絹の糸のような綺麗な髪が肩を這う。「リクエストは?」と問えば、なんでもいい、らしい。……なんでもいいのか。
「なら、俺の好きなようにするけど」
「ふふ、うん。お任せする」
そう言ってくれたはなびに「ん」と返して、髪を軽く櫛で分けた後に、ヘアゴムで結ぶ。
手先は器用な方で、すみれのヘアアレンジなんかもやってるから、髪をセットしてやるのは比較的得意だ。
「終わったら言って、目瞑ってるから」
「……そんな大したのやらねえよ」
ストレートアイロンのスイッチを入れて、温まるまでの間にためらうことなく髪を結んでいく。
そこまで遠くに行く予定はねえけどあんまりゆっくりしてたら、花火が上がる時間になってしまうし。
「……、いいよ。できた」
流した前髪をゆるくウェーブさせてアイロンのスイッチを切ると、はなびが目を開ける。
それから鏡を見て「すごい」と、とても満足そうに笑ってくれた。
「わたしこんなの絶対自分でできない……」
全体的に髪を上げて、せっかくだからとはなびの色鮮やかな髪が全色見えるような形で、花のように編みこんでやっただけ。
別にそこまで難しくないけど、どうやらご満悦らしい彼女は、「写真撮って」と自分のスマホを手渡してくる。