【新装版】BAD BOYS



聞こえた、よく知る声。

バッと振り返った先に、珠紀と。薄桃色の浴衣を身に纏うみやちゃんの姿。……なんでここに?



「……たまり場外したら来るとこ見事に被り」



「ああ……」



同じこと考えた、ってことな。

みやちゃんと来ているところを見ると、珠紀もたまり場以外でふたりになれるところを探していたんだろう。



「素直になったんだ?」



「……まあ、そうね。

珠紀こそ、無事に仲直りできたみたいで何より」



ぽんぽんと、はなびと珠紀の間で交わされる会話。

中身を知らないだけについていけなくてその様子をぼんやりとながめていれば、珠紀が「よかったね」と突然俺に言葉をふる。




「はなびと付き合えて……

やっと両想いに、なれたんだって?」



「……なんで知ってんの」



「んー、はなびに聞いたから。

色々悩んでたみたいだし、ちゃんとそのあたりも、話聞いてあげなよ?」



悩んでた?と。

俺が聞き返すよりも早くに、ドンッと少し鈍い音を立てて、夜空に咲く大輪の花。色鮮やかな光の粒が、ぱらぱらと視界で散っていく。



「……はじまったみたいだね。

俺らは向こう側にいるよ。気まずいの嫌でしょ」



言うが早いか彼女の手を引いて、視界から消える珠紀。

はなびももうすっかり夜空に打ち上げられる花火に夢中で、ほかのことを気にしている様子は全くない。盗み見た横顔が、綺麗だった。



──色々、悩んでた。

それを別の男から聞かされる俺の気持ちにもなってほしい。……心底、尽きない欲張りだけれど。



< 349 / 463 >

この作品をシェア

pagetop