【新装版】BAD BOYS
耳元で囁かれる言葉は、とろけそうなほど甘い。
お客さんにもきっと同じように囁いているのだろうけど、そんなのどうでも良くなるくらい、大事に思われていて。
「ノア、」
「ん?」
「だいすき……」
同じ言葉を返せば、ノアが嬉しそうに目を細める。
強く強く抱きしめられて、本当に幸せだと思える。……この人を選んで、よかった。
「愛してるよ」
それは彼がわたしだけにくれる、最上級の愛の言葉。
あまりにも嬉しくて思わず涙を滲ませれば、ノアは「可愛い」なんて言いながら、わたしのことを片隅まで愛し尽くしてくれた。
「身体つらくない?」
じんわりとした倦怠感に身を任せ、微睡むわたしを、気に掛けてくれるノア。
こくりと頷けば、そっと頭を撫でてくれた。
「明日、朝から出掛けることになったの……」
「うん? ……例の女ともだち?
こっちで女ともだちできたの初めてだからって、前にかなり喜んでたもんね」
さらりと言う彼に、じわりと熱を持つ頬。
……なんでそんなこと、覚えてるの。
たしかに中学の時は『花舞ゆ』メンバーと親しかったこともあって、女友だちと呼べる子はほとんどいなかった。
転校先ではそれなりに仲の良い友だちもいたけど、お互いにはっきり女友だちと言い合えるのは桃と杏子に限られると思う。
それがちょっとうれしくて、転校して1ヶ月ぐらいのときに、レポート作成してるノアに絡んだ覚えがある。
適当にあしらわれていたのに、まさかちゃんと覚えてるなんて。