【新装版】BAD BOYS



「はなび」



「ん……?」



花火から視線を逸らした彼女が、俺を見る。

口下手な方ではないけれどはなび相手に正直に物を言うのは俺だって緊張するし、お互いに不器用だと思うことも多い。



我慢するのと、欲張りになるの。

どっちが幸せなのかって、そんなの、結局は試してみなければどうにもならないわけで。



「はなびから見て……俺って頼りない?」



「ううん、全然。

むしろとっても頼れると思ってるけど?」



これから先さらに欲張りになったらどうするんだろう、と自分でも思う。

感情の中で「恋情」ほど、喜怒哀楽が豊かなものはないんじゃないだろうか。




「でも悩み事は、俺には言えない?」



「……それは付き合う前の話よ。話した相手が珠紀だったのは、似たような境遇だったから。

椿こそ、わたしに隠し事してない?」



「隠し事?」



「ええ」



隠し事なんてしてない。

そんな誤解を受けそうなことは何も。そう言い切るつもりだったのに。



また打ち上げられた花火の光を背後に受けてどこか刹那的に。はなびのくちびるが「元カノ」と動いたのを見た瞬間、どきりと鼓動が動揺で揺れる。

一体。……なにを、どこまで。



「いまだに連絡取ってるらしいじゃない。

珠紀から教えてもらったけど、違うの?」



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