【新装版】BAD BOYS
「違、っ……、そう、じゃ、なくて」
違う、と咄嗟の言い訳を、呑み込む。
何を言っても無駄だった。連絡を取っているのは事実だ。はなびに告白してからは会っていないけれど、再会した頃には何度か会っていた。
内容はほかの遊びの女の子と何も変わらない。
だけど元カノ、と名前が違うだけで形が変わることを、俺は知っていたから。
「……告白してからは、もう、断ってる」
「……うん」
「向こうが俺に未練あるからって言ってるけど……
結構困ってる。メッセージ全部確認してもいいよ」
スマホを取り出して、彼女の名前に触れて。
はなびに渡せば、ちらっと画面に視線を落としただけで「いいよ」とそれを俺に返した。
信頼してるから見なくてもいいよ、と。
彼女の言うその「信頼」が俺の4年分の想いなんだとしたら、ちゃんと伝わっているんだと思う。何にも変えられない、俺の特別な存在。
「ごめん……この際だから、俺も聞きたいんだけど」
花火の下でするには、随分と浮かない。
想い合ってからのデートは初めてなのに、どうしてこうも、感情はうまく重ならないのか。
「先輩と連絡、取ってんの?」
付き合うことになって少ししてから、彼の自宅にはなびが置いたままの荷物を一緒に取りに行った。
「付き合ったんだ?」と聞かれたけれど、それは肯定することなく「まだ俺の片想いです」としか言わなかった。
勘のいいあの人のことだから、
きっと色々バレていることはあるだろうけど。
「……取ってる、わよ。
また落ち着いたら千秋さんやのいちゃんも一緒に出掛けたりしようって誘われたけど、椿がいるからやめておくって返事した」