【新装版】BAD BOYS
はなびは前に直接話をした時に会ったらしいけど。
あ、あと染は夏休みがはじまった頃に向こうに話をしに行ってたから、知ってるのか。
「姉さんって、仕事忙しいんだよ。
ルーム……ああ、俺らのたまり場みたいなとこね。姉さんはそこに住んでんだけど、学生組は22時に帰るから、姉さんが仕事遅いと会わないし」
「……へえ。何の仕事?」
「『Tiara』っていうネオン街1のキャバ知らない?
そこのキャバ嬢。しかもナンバーワン」
ってことは相当なやり手なんじゃねえの。
だから金の浪費もそこまで気にしてないんじゃねえかな、とそんなことを思っていれば。ふとたまり場のすぐそばに、高級外車が停車した。
「あれ……ヒトカさんの車じゃん。
ってことは……、ミル!マヤ!」
手に持っていた紙皿を、「ちょっと頼んだ」と俺に押し付けるシイ。
それぞれ別の場所にいたふたりを呼んで招集したかと思えば、その高級外車に駆け寄っていった。
「……あれ、あいつらの知り合いか?」
「芹。……そうなんじゃねえの?
っつーかお前何持ってんのそれ」
「ん? マシュマロ。
そろそろ網から食材なくなりそーだから焼くんだよ」
ああ、焼きマシュマロな。
芹が持つ串刺しのマシュマロに目ざとく気付いた甘いもの好きの穂が駆け寄ってきて、「マシュマロ焼こ〜!!」と盛り上がっているのを見ていれば。
「姉さん……!」
どこからともなく上がった声に、一斉に視線が向けられる。
高級外車の後部座席のドアをシイが開けて、八王子が手を差し伸べてエスコート。
それが本当に"王子様"にしっくりくるせいで、思わず舌打ちした。
風貌から性格も、取り巻く何もかもが俺とは合わない。