【新装版】BAD BOYS



「、」



そんなことを考えていたのは、ほんの一瞬で。

その車の中から出てきた"彼女"は。胸元から肩をがっつり露出した黒いワンピースをまとった女性。一目見て、"姉さん"だってことはわかる。



だけど男連中の思考が完全に持っていかれたのは、それが原因じゃなかった。

キャバ嬢、とシイが言うから、もっと派手な女性を想像していたのに。



「あら、随分と打ち解けてるみたいじゃない。

ふふ、ルームで留守番してる大人組が、俺らも行きたかったって随分と拗ねてたわよ?」



艶のある綺麗な黒髪と、綺麗な白い肌。

メイクしなくてもいいんじゃないかって思うほどに整った顔は、自分の魅せ方をよく知るメイクが薄らと施されているだけ。



「『花舞ゆ』の子とは、ほとんどが初対面ね。

はじめまして、わたしが『BLACK ROOM』の設立者よ。本名はこっちの子たちにも教えてないから……そうね、仕事上では『トウカ』って呼ばれてるわ」



"姉さんでもいいけど"、と。

綺麗に微笑んで見せた彼女は。




「どうぞ、うちの子たちと仲良くしてやって」



どう考えても、"上に立つ人間"の表情だった。

シイが「姉さんの言うことは信頼できる」って言ってたけど、今ならその意味がよくわかる。



「姉さん、どうしてここに?

今日は用事があるから来れないって、」



「ああ、それが案外早く済んだのよ。

それに最近学生組とは顔合わせられてなかったし、かまってあげられる時間も少なかったでしょう」



そう言ってすぐそばの『BLACK ROOM』に所属する中学生に手を伸ばして、髪を撫でる彼女。

その彼女のまわりには、すぐに人だかりができる。それを見ているだけで、わかることは色々あって。



「すげー信頼関係だな……」



ぽつっとつぶやいた芹の言葉に、俺も穂も迷わず同意した。



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