【新装版】BAD BOYS



要するに、色々あるから話したくない、と。

あれだけ色気のある人なら恋愛話も多いんだろうと思っていれば、ツンツンと服を引っ張られて。そこでようやく、はなびがすぐそばにいたことに気づいた。



「ん……? どした、はなび」



「……、」



「……はなび?」



黙ったままの彼女。

顔を覗き込めば、何か言いたげに俺を見つめて、一度は口を開こうとしたのに、結局きゅっとくちびるを結んで何も言わない。



「椿がずーっと姉さんに熱視線送ってたから、

それ見て拗ねてるんじゃないの?」



興味なさげにそう言って、炭酸の入った缶に口をつけるシイ。

いや熱視線なんて送ってねえし、とはなびを見たら、彼女はなぜかそれを否定することもなく。




「……え、ほんとにそれで拗ねてんの?」



「……拗ねてない」



ふいっと、それだけ言って顔を逸らしてしまうはなび。

拗ねてない……けど、原因は彼女を見てた俺ってこと?別に熱視線なんか微塵も送ってたつもりはねえけど、それが嫌で甘えに来たってこと?



「……なに、お前ら付き合ってんの?」



マシュマロを食べていたから大人しかった芹が、唐突に話題を振ってくる。

一瞬そっちに気を取られて顔を上げた瞬間、身体にゆるい締め付け。視線をバッと戻せば、彼女が俺の胸に顔を埋める形で抱きついていて。



「え、ちょ、ええ……!?

はなびさん、どうしたんですか……!?」



気づかれたかと思うとデカい声でそう拡散されたせいで、一気に視線が集まってしまった。

……あーあ、これ以上ねえぐらい目立ってんじゃねえか。



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