【新装版】BAD BOYS



「あー……ちょっと疲れたってさ。

染、ガレージの2階使っていい?」



「……ああ。好きにしろ」



「ん、さんきゅ。

はなび、ちょっと中入って休憩しよ」



そう囁いたのに離れようとしない彼女。

「はなび」ともう一度声をかければ、腕を離して、俺の手を握るから。もうバレてもいいかとそれを握り返して、ガレージへと足を進める。



外の騒がしさとは、打って変わって。

シンと静まり返っているガレージの中。ふたりの足音だけが、誰もいないその空間では大きく反響する。



「……別に熱視線送ってるつもりなんてなかったけど。

ほんとにそれが嫌だった?」



2階に上がってソファに座らせると、その前に屈んで彼女を見上げる。

俺をじっと見たはなびはこくんと頷いて、「……嫌?」と小声で俺に尋ね返してきた。




「……わたし、こんなの都合良すぎだって思ってるんだけど」



「別にそんなこと思わねえよ。

俺のこと好きでいてくれて嬉しいけど?」



「ノアの時、は、もっとマシだったのに……

椿の視線の先だけで嫌になるなんて、どんどん椿のこと好きになってて、怖い……」



伏し目がちに視線を落とすはなび。

心配しなくても俺はずっと好きだし、はなびがそんな風に思ってくれているなら本当に嬉しい。どんどん好きになってる、なんて、嫌に思うわけがない。



手を伸ばして髪に触れながら「解いていい?」と尋ねれば、小さく彼女がうなずく。

編み込んだ髪を解き、癖がついてくるんと浮いてしまっている部分を指で梳きながら、口づけを落として。



「ん……、」



ギシ……と、静かな空間でやけに扇情的に音を立てるソファ。

深くなるキスの中で、はなびが縋るように俺の服を掴んだ。



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