【新装版】BAD BOYS
「遅いと、誰か様子見に来るかも……」
「その時は適当に誤魔化すから」
今この時間を誰にも邪魔されたくない。
ゆるく広がる鮮やかな髪。ふたり分の重みを受けてソファが軋む。口づけの隙間でこぼれる吐息をわざと煽るように引き出して。左手は彼女の右手とキツく指を絡め、伸ばした右手を首筋に伝わせる。
「っ、」
ピク、とはなびが身体を揺らして。
ゆるゆると首を横に振るのは、拒否か、それとも。
「本気で嫌だったらそんな顔しねえよ、はなび」
「だからって……
こんなところで襲うのはどうかと思うよ?」
ビクッと、はなびが驚いたように震える。
俺も俺で動きを止めて突然聞こえた声の方へ視線を向けると、いつからそこにいたのか心底気だるそうにこっちを見る男。
「ま、マヤ……いつからいたの……」
「ガレージに入ってきたのは結構前だけど。
上がって来たのははなびが押し倒されたぐらい?」
「ずっと見てたんじゃない……っ」
「いや、はなびの角度からだと俺の姿見えててもおかしくないんだけどね。
あまりにも彼に夢中で気づかないから声掛けちゃった」
ごめんね?と。
微塵も悪いと思ってなさそうな顔で謝った男を不機嫌に睨む俺に、俺の下にいるはなびが「椿」と小さく名前を呼んだ。
しかたなくソファからおりて、はなびを起こす。
……俺だってさすがにここでそのままはなびと、なんて思ってはないけど。邪魔されたらされたで苛立つ。邪魔したのがこの男だから余計に腹が立つ。