【新装版】BAD BOYS
覚えてるとは思ってなかったから、話を掘り返されると恥ずかしい。
彼の胸元に顔をうずめるようにしてそのはずかしさを隠すのと同時に、明日出掛ける相手が椿であることを誤魔化した。
ノアが家に来るのは、毎週1度か2度。
平日は固定の用事ばかりだけど、土日の予定は毎週変わる。明日はせっかく一緒にいられる日だったのに、椿との予定を入れるなんて惜しいことをしてしまった。
「近いうちに、どこかで時間作るから。
……俺ともデートしようよ、はなび」
え?と。顔を上げる。そうすればノアは、わたしが思っていた何倍も優しい顔で、わたしの頭を撫で続けていて。
「最近してなかったでしょ」と言うけれど。
「いい、わよ。
ノアが大変なの知ってるし、出掛けたら絶対わたしに財布出させてくれないでしょ」
「もちろん。デートだからね。
はなびはまだ高校生なんだから、おこがましいぐらいがちょうどいいよ。俺に甘えてて」
彼の負担になりたくなくて、どうしても消極的になってしまう。
そのわたしの気持ちをわかったように諭すノアだって、年齢はふたつしか変わらないのに。……先に大人になって、置いていかないでほしい。
「そういうわけにはいかないの」
はやく、大人になりたい。
そうすればきっと、もっと、力になれるのに。
「だから、気遣いすぎなんだって。
はなびは俺とデートしたくないの?」
「……その聞き方はずるい」
したくないなんて、言えるわけがない。思ってもない。
そうすれば彼は当然連れて行ってくれるだろうし、でも。なんてぐるぐる考え込むわたしの思考はお見通しだとでも言うように、ノアは笑った。
「最近だと、雨になる確率の方が高そうだし。
水族館とか映画館とかどう?無難だけど」
するりと、わたしの指に絡む指先。
軽く指先で戯れているだけなのに。撫でたりなぞってみたり、誘うようなことをされているような気になってくる。……なんか、だめだ。