【新装版】BAD BOYS
散々な物言いで機嫌を損ねたらしい椿は、何か思い出したように顔を上げる。
どうやら彼の要件はわたしに関係しているらしく、彼は「泊まりに来ねえ?」と首を傾げた。
「父さんと母さんが、夏休みすみれの面倒たくさん見てもらったからご馳走したいって。
あと、既にすみれがはなびに会いたがっててさ、」
「っていう言い訳をして実際はふたりきりとかそういう展開だろうから気をつけなよはなび」
「そんなゲスいことしねえよ」
だめ?と聞いてくる椿。
もちろんダメじゃないし、わたしだってすみれちゃんに会いたい。「うん」と頷けば彼はわたしの頭を撫でて、「じゃあ決まり」と微笑んだ。
「お盆休み中ならいつでもいいって言ってたけど……
そんな急なの嫌だったら、夏休み終わってからでもいいから」
「わたしこそいつでもいいわよ?」
むしろ合わせるし、と。
言えば椿はその場で電話して、両親に確認を取っていた。前から思っていたけど彼は両親ととても仲が良い。もちろんすみれちゃんとも。
「あ、椿。
ほかの日ならほんとにいつでもいいんだけど、今日はちょっと用事あるから、」
「ん? ん、了解。
じゃあ急だけど明日とかでもいい?」
明日なら大丈夫、とこくこくうなずく。
その旨を伝えた椿は電話を終わらせて、「今日用事あんの?」と尋ねてくる。
「遅くなるなら送るし迎えに行くけど、」
「あ、ううん。出かけるわけじゃないの。
電話するだけなんだけど、それが長くなりそうだから」
たった今決めた用事だけど。
そうやって椿の両親にも「彼女」として呼んでもらえるなら、わたしもそれなりに向き合いたいことがある。それを済ませてしまいたいだけだ。