【新装版】BAD BOYS
「おにーちゃーん」
「ん?」
「これいっしょにやろー?」
たたたと駆け寄ってきたすみれが、俺の手を引く。
一度はなびには遠慮したけど、すみれは「一緒に」と言ったら絶対に離してくれない。わかっているから歩み寄って、すみれに渡された花火に火をつけた。
「……普段からそうやって大人の対応してたら、
みんなに揶揄われることはないんじゃない?」
くすくすと。
楽しげに笑ってるはなびが一番、俺のことを揶揄って遊んでると思う。全員俺の扱いを改めてほしい。俺いじられキャラじゃねえから。
でもまあ、遠慮せずにいられる場所が『花舞ゆ』だから。
ああやってはしゃぐのも、それはそれで好きだけど。
「すみれ、今日楽しい?」
「うんっ、たのしいよー」
「ふ。……ならよかった」
すみれの頭を撫でて、声をかけられた時にだけ一緒に花火に付き合って。
30分とすこしで線香花火以外の花火を使い切ると、すみれは父さんに声をかけられて家に入っていってしまった。自由人すぎる。
「線香花火には興味ねえのか……」
「ふふ、ふたりで一緒にしよう?」
まあこれだけ残しといてもどうしようもないし。
やろうかと屈んで、線香花火に火をつける。さっきまでの花火と打って変わって、光も小さければ音も小さい。すみれがいないのもあって、急に静かだ。