【新装版】BAD BOYS
・
声が、聞こえる。
俺の愛しい彼女の声と……この声、は。
「俺が最後まで起きてんのとか、すげー珍しい気がする。
酒強いのは染と珠紀だからな。大概俺らと飲んでから、サシで飲んでんだよ」
「……あなたたちまだ未成年なんだけど」
「わかってるっての。
染も飯食ってる時ずっと隣のマヤの話し相手になってやってたし、疲れたんだろーな。珠紀も、染が寝たからつまんなくなって寝たんだろ」
芹の声、だ。
それははっきり鮮明に聞き取れるのに、頭がすごくぼんやりする。肌寒くて、感触だけでタオルケットのようなものを首元まで引き寄せた。
「……、」
どちらかがグラスを持っているのか、グラスの中で氷が回る甲高い音がする。
空間が、静かで。何もないとわかっているのに、ひどく幻想的で、背徳的で。
「……やっぱ俺、お前のこと好きだわ」
聞こえた声に、はっ、と。
頭の中が急に冴えたような感覚を与えられて、金縛りが解けたかのようにまぶを持ち上げる。ふたりを盗み見ると同時に視界に入った時計は、2時前を指していた。
うるさいのは、時計の秒針か。
それとも答えを待つ、俺の心臓か。
「……その好きは、どの好き?」
取り乱すこともせずに。
落ち着いて尋ねるはなびの声は、穏やかで。
「……あん時と、おんなじ」
そう答える芹の声もまた、ひどく冷静だった。