【新装版】BAD BOYS
最終的に「好き」と言ったのは、みやちゃんのほうが先みたいだ。
それでも、言われたそれに不服らしい珠紀は、「だからさ」と口を開く。
「その理論だと、俺よりも片想い期間の長い椿のほうがそうなる確率高いでしょってこと。
なのに、椿が何もしてないとか言うから、」
「……逆に不安なんじゃねーの?」
「……不安?」
芹の口から出てきた、不安という言葉。
それに引っかかったのはわたしの方で、「何が?」と尋ねれば、芹は視線を珠紀からわたしへと向けた。
「だから、あいつ遊んでたけど本命と付き合ったことねーだろ?
そういう意味ではあいつも色々とはじめてだから、不安なんじゃねーのって」
詳しい原因まではさすがにわかんねーけど、と。
言われて思わず考え込む。そんな不安そうなそぶりを見た記憶はないけど、告白された時だって好きな子と手をつなぐのは緊張するって言ってたし。
「まだ付き合って1ヶ月経ってねえんだから、別に遅くねえだろ。
はなびと椿にもお互いのペースってもんが、」
「いや、芹が正しいかもね。
万が一はなびに「元彼のほうがよかった」なんて言われたら椿も立ち直れないでしょ」
せっかく染が話を纏めようとしてくれていたのに、それを早々に崩しにかかる珠紀。
しかもそこにわたしとノアが勝手に使われてるし。さすがにわたしも椿を傷つけるようなことは言わないわよ、と言い返してみれば。
「知ってる? はなび。
男って、彼女に気を遣われるほうが傷つくんだよ?」
「うん、そろそろ椿が可哀想だからやめてあげて。
椿のプライドをズタズタにしないであげて」
珠紀は絶対楽しんでるだけだ。
それに気づいて「あんまり色々言うとみやちゃんに密告するわよ」と伝えれば、彼は笑顔のまま口をつぐんだ。それは困るらしい。
……なんだかんだ彼女に対しては素直よね。
それは珠紀に限ったことじゃなくて、椿もだけど。