【新装版】BAD BOYS
「ごめんね、和馬がいつも。
……さてと、今日のご要望は?」
「えっと、」
エクステのオフとヘアカットに加えてカラーをお願いすれば、その目をぱちぱちと見張ったのは和璃さんの方で。
彼は「その髪色やめちゃうの?」と首をかしげた。
「せっかく綺麗な色なのに」
「ふふ、もう大丈夫になったので」
意味もなく、というか。
芹が褒めてくれたから続けていたこの髪。
名残惜しくて引っ越してからもこのままにしていたけれど、もうそんな目で見て確かめるものがなくたって繋がっていられるから。
ある種、ノアへの感情を終わらせるという意味では、わたしなりのケジメだった。
「カラーのご希望は?」
そう言って微笑んでくれる彼は、きっと色々とわかっているんだろう。
大人になれば何かが解決するわけではないけれど、大人になれば今逃せないこれらも、すこしは受け入れやすくなるのだと。
あきらめ、とはまた違う。
「ブルージュで」
わたしの言葉に彼は「了解しました」とやわらかく返事をくれる。
実はひそかに決めていたことがある。次髪を染めるなら、ブルー系にしようと思っていた。
それは紛れもなく、椿がいるからで。
彼に合わせるわけではないものの、そう簡単に変えることはないだろう、つながりになるから。
椿を好きだという、意思表示だ。