【新装版】BAD BOYS



「色々、と。複雑な家庭なのよ」



そう言って、明確な答えはくれなかった。

だから腕に抱かれている女の子がトウカさんの子どもなのか、それとも彼女がいま面倒を見ているだけなのか、わからなかったけれど。



「お互いの個人情報は、あの場所ではトップシークレットだから。

……あの子たちに、わたしが今日この子を連れてたこと、言わないでほしいの」



「……わかりました」



ブルージュに染まったわたしの髪をそっと撫でてくれた彼女は、「ごめんね」と一言謝る。

それにふくまれた意味は、あえて、考えないことにした。



「あ、はなびちゃん」



お会計を済ませた後。和璃さんにお礼を言って帰ろうとしたら、和馬くんに呼び止められる。

はい?と振り返れば「家近いんでしょ?贈るよ」と彼は微笑むのだけれど。




「……近い、から、送らなくていいんですよ。

ありがとうございます、気を遣って頂いて」



「や、うん、でもかわいいからさ。

変なのに絡まれたらめんどくさいでしょ?」



「素直に心配だから送っていくって言えばいいのに……

はなびちゃん、カズは言い出したら聞かないだろうから、送ってもらったら?」



このあと予定ないなら、と。

トウカさんにまで言われてしまえば仕方ないから、その言葉に甘えて和馬くんと店を出る。



「ほかのお客さんのこともこうやって送っていったりするんですか?律儀ですね」



「いやいや、今回だけだし……!

……それにリ、じゃなかった、トーカも、俺いない方が和璃さんと話しやすくっていいっしょ?」



彼女が訪れたのはプレートを変更した後だ。

けれどふたりとも普通に迎えていたあたり、いつも"そう"なんだろう。



< 426 / 463 >

この作品をシェア

pagetop