【新装版】BAD BOYS
「色々、と。複雑な家庭なのよ」
そう言って、明確な答えはくれなかった。
だから腕に抱かれている女の子がトウカさんの子どもなのか、それとも彼女がいま面倒を見ているだけなのか、わからなかったけれど。
「お互いの個人情報は、あの場所ではトップシークレットだから。
……あの子たちに、わたしが今日この子を連れてたこと、言わないでほしいの」
「……わかりました」
ブルージュに染まったわたしの髪をそっと撫でてくれた彼女は、「ごめんね」と一言謝る。
それにふくまれた意味は、あえて、考えないことにした。
「あ、はなびちゃん」
お会計を済ませた後。和璃さんにお礼を言って帰ろうとしたら、和馬くんに呼び止められる。
はい?と振り返れば「家近いんでしょ?贈るよ」と彼は微笑むのだけれど。
「……近い、から、送らなくていいんですよ。
ありがとうございます、気を遣って頂いて」
「や、うん、でもかわいいからさ。
変なのに絡まれたらめんどくさいでしょ?」
「素直に心配だから送っていくって言えばいいのに……
はなびちゃん、カズは言い出したら聞かないだろうから、送ってもらったら?」
このあと予定ないなら、と。
トウカさんにまで言われてしまえば仕方ないから、その言葉に甘えて和馬くんと店を出る。
「ほかのお客さんのこともこうやって送っていったりするんですか?律儀ですね」
「いやいや、今回だけだし……!
……それにリ、じゃなかった、トーカも、俺いない方が和璃さんと話しやすくっていいっしょ?」
彼女が訪れたのはプレートを変更した後だ。
けれどふたりとも普通に迎えていたあたり、いつも"そう"なんだろう。