【新装版】BAD BOYS
「ほら、なんていうか……
やっぱ、大人同士じゃないとどうしようもないことあるじゃん?」
「どうしようもないこと、」
「そうそう。どう頑張ったって、子どもにはわかんないよーなこと。
……髪切るついでに、いつも話してんだよね」
「………」
トウカさんはなんというか、特別な人だ。
誰とも雰囲気が違って、大人な人。だけど。
「ま、俺はトーカと昔馴染みだけど。
はなびちゃんみたいに女の子と仲良くしてんの初めて見たしさ。……なんかあったら、助けてやって」
きっとよろこぶよ、と。
微笑んだ和馬くんは宣言通りにわたしをマンションへと送り届け、「じゃあまたね」と、和璃さんとよく似た表情で笑う。
ひらりと手を振った彼を見送ってからマンションのオートロックを解いて、エントランスに足を踏み入れるとエレベーターに向かう。
『3』のボタンを押して密室の壁に身を預け、ふっと吐息を漏らした。
「会いたい、な……」
いつもなら騒音にかき消される独り言も、静かな空間では大きく響く。
部屋までたどり着いて鍵を施錠すると、ポケットに忍ばせていたスマホを取り出した。
季節はずれだけど彼が泊まるのは温泉宿で、近くに海水浴場があるらしい。
この時間だと、温泉に入っていて出ないかもしれないけど。
『もしもし?』
「……、」
『はなび? どした……?』