【新装版】BAD BOYS
衝動的にかけた電話の向こうから聞こえてきた声が、あまりにもいつも通りの椿だから。
どうしてかすごく安心して、泣きたくなった。
「つばき、」
『ん……?』
「逢いた、い……っ」
ぽろっと、こぼれた涙のまじった声。
電話の向こうの椿はあからさまに「え!?」と取り乱して、それでもつとめて優しく声をかけてくれる。
『ちょ、まじで、どしたの……?
俺がいない間にそっちでなんかあった?』
わたしが涙で話せないせいで、彼は状況がわからずにあたふたしているし。
「違う」と言いたいのに、言葉が出てこない。
『あー……とりあえず……
俺が明日帰ってからでも大丈夫な余裕ある?』
「、うん」
『それならよかった。
……ごめんな。電話だと顔見れねえから、はなびが思ってることわかってやれねんだけど、』
困ったように言う椿に、見えもしないのにふるふると首を横に振る。
自分でもいきなり泣いてしまったことに恥ずかしくなって、小さく息を整えて、涙を拭った。
「ごめ、んなさい……せっかく旅行中なのに。
本当に何もないの。ただ、会いたく、なって、」
ごめんなさい、と。
もう一度謝れば彼は、「なんで?」と聞き返してくる。
『なんではなびが謝ることあんの?』