【新装版】BAD BOYS
「な、にして、」
口を突いて出たのは、弱々しく漏れる否定的な感情だけ。
それでも笑みを崩さない椿は触れるだけのキスをして、すっかり見慣れたブラウンのアーモンドアイでわたしを射抜く。
「ん?
そろそろ、"俺の"って印つけとこうと思って」
「っ、」
「で、結局どうされたいんだっけ?」
繰り返される甘い展開。
廊下の隅で座り込んで、椿に甘く問いかけられる。追い詰められて、逃げ場所なんてなくて。
彼が泊まると言った時点からすでに、
わたしが椿から逃げる術なんか、どこにもない。
「返事しねえなら、好きにするけど」
喉が音もなく上下する。
椿の色っぽい表情を見て、脳がくらくらする。
でも、もういい。
この色気のある男をわたしだけがひとりじめしてしまえるなら、もう、なんでもいい。
「椿、」
だから、ぜんぶちょうだい。
わたしがみっともなく乱れるくらいに、ぜんぶ。
「……ああもう、クソ、」
いつもの優しい声とは裏腹な椿の乱雑なそれ。
珍しくて思わず瞠目すれば、椿は呆然とするわたしをバッと抱き上げて、そのまま器用に寝室の扉を開ける。