【新装版】BAD BOYS



「待っ、本気?」



「は? 本気じゃないと思ってんの?」



鋭い視線を向けられて「いや……」と否定する。

これだけなら拒めたのに、鋭い視線の奥にある甘く蕩けそうな感情に、すべて委ねたくなるから。



「優しく……して、」



ベッドに寝かせたわたしに覆いかぶさった椿にそう言えば、彼が一瞬ぴたりと動きを止める。

それから「わかってるよ」と返ってきた声に、余裕なんてものは、残っていなかった。



ついさっきまで、あんなに余裕げでわたしの感情を支配していたくせに。

なんて、心の中で文句を言いながらも。



わたしを求める口づけがあまりにも優しいから。

絡む指先の間でしっとり汗ばむ体温すら愛おしいから。




「、」



──すき、だと。

告げようとしたタイミングで鳴り響く着信音に、椿が肩を揺らした。それから無視しようと視線を逸らしたようだけれど、できなかったらしい。



「……、なに?」



ため息とともに落とされた低い声。

ああ不機嫌だな、と彼を見上げていれば、絡んだ指先を戯れるように遊ばせる椿。くすぐったさに小さく笑みを零すわたしを、見下ろしていた椿は。



「……は?」



わかりやすく、眉間をしかめる。

だけどそれは、たった今までの不機嫌と違って。



「怪我したって、誰が、」



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