【新装版】BAD BOYS
弾かれたように、椿を見る。
その表情は曇っていて、わたしにも内容が把握できるようにと椿が通話をスピーカーに切り替えてくれる。
「誰が、怪我したの……?」
『──染だよ』
崩れる。目の前で、何かが、大きく。
ぐらついたそれはわたしの中の不安を一気に掻き立てて、立ち止まることを許してはくれない。
「っ、無事なの……!?」
普通の怪我じゃないってことはわかる。
だってそれなら、珠紀がわたしたちに連絡してくる必要なんてないから。会った時に「怪我したんだよ」と彼から聞くだけでいいから。
なのに、どうして、なの。
『落ち着いて、はなび。
これでも『花舞ゆ』はチームで、しかも俺らは小学生の頃からお世話になってるんだよ。その頃の先代は今よりもっと喧嘩強い人が多かったから、』
染が喧嘩強いのは知ってるでしょ?と。
珠紀はわたしを諭すように告げるけれど。
ならどうして、染が無事だって言ってくれないの。
『男数人に絡まれたみたいだけど、左腕にヒビが入って全治二週間。
多少顔に傷はあるけど、それ以外は無事だよ』
「、」
『今は休ませてるけど、『BLACK ROOM』の方が動いて仕事してくれてる。
情報については俺らよりも、"姉さん"の方が圧倒的に掴むのが早いらしいからね。そろそろ調べがつく頃だけど、いまから来れる?』
椿だけでもいいよ、と。
珠紀はそう言ってくれるけど。大切な幼なじみがそんな目に遭ったのに、家でじっとしていられるわけがない。