【新装版】BAD BOYS

・twenty-nine








「……嘘をつくならもうすこしマシな嘘をついてくれてもいいと思うんだけど。

そのあたりどう思う? ミル、しづ」



「お前にだけは言われたくないと思うよ、マヤ。

……まあ、今回のあからさまな嘘は俺も見逃せないけどね」



ふたりが出ていったガレージの中。

ため息まじりに八王子とシイの間で交わされる会話をはかろうと目を細めていれば、それに気づいたシイが「あれ嘘だよ」と口にした。



「個人的な恨み、ってやつ。

このあたりは今、御陵組の取り締まりが強化されてるから。そんな問題でも起こせばすぐに面倒なことになる。……そんな単純な話じゃない」



「じゃあ、なんで嘘なんか……」



「本当に個人的な恨み、だとしたら。

その矛先は染じゃなくて、姉さんだろうね」



……俺らも当事者のはずなのに、まったくもって意味がわからない。

眉間を寄せればシイは、「だから」と口を開く。




「俺らも詳しいことは知らないけど、姉さんは御陵組と何らかの関係を結んでる。

だから今回のことには、たぶん組が絡んできてる」



「、」



「御陵組の敷地内で、御陵組と関係のある姉さんが手を結ぶことを決めてる相手の、『花舞ゆ』のメンバー……しかも、現トップ。

手を出せば何か一つ面倒なことぐらい起こってもいいのに何も起こらないってことは、そのへんの後処理がされてる」



「後処理、」



「はじめから切っても構わない連中を使った、か。

もしくは何らかの方法で隠蔽したか」



詳しく説明してくれているはずなのにそれでも理解しきれない俺に、「まあ単純に言うと」とシイはさらに手早く話を纏める。

それもそのはず、わかっているのはブラック側の人間と染と珠紀だけで、ほかの連中はさっぱりだから。



「何者かが俺らと『花舞ゆ』を使って、

姉さんに危害を加えようとしてる可能性がある」



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