【新装版】BAD BOYS
「椿が食べてたのがトマトのパスタで、わたしはレモンクリームのだったでしょ?
だから、味が混ざらないようにフォーク使っていいよって貸してくれたけど、」
「ん、間接キスしたな」
「……実はドキドキしてた?」
たのしそうな声色の彼女。
別に間接キスで動揺するほど俺はピュアじゃない、と、思いたいけど。
「……してたって言ったら?」
平然と俺のフォークを使った後、平然と返してきたはなびが恨めしかったのは本当だ。
意識してんのもなんだし誤魔化すように普通に使ったけど。その逆のパターンでも、彼女は間接キスなんて微塵も意識してないみたいに使ってた。
……いや、本当に意識してなかったんだろうけど。
「んー、してくれてたら、うれしいなって」
くすっと楽しげに笑うはなびを見てたら、その恨めしさもなんでもよくなる。
だけど、一つ気になる点があって。
「……そもそも、彼氏いるくせに間接キスとかする?」
「うっ……」
指摘すると言葉に詰まる彼女。
まあ場に流されたっていうのもそうだし、状況から見て店員さんに新しいフォークをもらう、っていうのもなんか違うけど。
「まさか俺と付き合ってから別の男と間接キスとか、」
「してない……!」