【新装版】BAD BOYS
手の甲で涙を拭った穂が、「つーちゃん」と俺を呼ぶ。
意図したわけではないけれど、「つーちゃん」と俺を呼ぶのは、穂だけだった。
「……いままでどおりで、いてね。
つーちゃんにも、はなちゃんにも、罪悪感とか感じて欲しくないから」
「……、うん」
「そんな顔せずに、普通にしてて。
普段みんなに色々からかわれてるけど、つーちゃんかっこいいんだから、自信持ってよ」
さらりと褒められて、小さく笑う。
穂は感情に対してすごく素直で、「かっこいい」って言葉も、照れも何もなしに惜しみなく告げてくれるから。
だからこそ、黙っててくれた気持ちの大きさは疑うまでもなくて。
それでも俺の返事は、「ごめん」以外にない。
特別なのは今までもこれからも、ずっとたったひとりの女の子だけだから。
「そういえばつーちゃん鈍感だからしらなかっただろうけど、
ほかのみんなはとーっくにぼくの気持ち知ってたよ?」
「……え、まじで?」
「うん。それでも拒否せずにいてくれるんだから、ほんとみんな優しいよねー」
『花舞ゆ』にいてよかった、と。
穂の言葉に、「そうだな」と同意した。シイはこれから先の将来がどうこうって言ってたけど、どんな出来事があるにしろ、『花舞ゆ』のメンバーが自分の居場所を恨むことなんてない。
「はなちゃんも、きっと知ってただろうけど。
ぼくからちゃんと、今日のこと話すね」
「んー……うん。そうしてやって」
俺らにしか、わからないこともある。
他人には軽く聞こえる『仲間』って言葉に、俺らが嘘をついたことなんて、一度もない。──お互いに心の底から信じているから、『花舞ゆ』は今もこの街に在る。