【新装版】BAD BOYS



「……あ、椿さん穂さんおかえりなさい」



「ただいま」



予定通りコンビニに立ち寄ってから、一緒に買ってきたお菓子やジュースなんかが入った袋を下のメンツに渡してやる。

それから顔を上げればソファに呑気に座りつつ、目が合えばひらひらと手を振ってくるシイと。



「わ、トウカさんっ。

今日はお仕事じゃないんですか……?」



今日も色気たっぷりの彼女がいる。

先に駆け寄っていった穂に続いて、「何かあったんですか?」とふたりの方へ歩み寄った。



「うん、一応用事があったのは染なんだけど……

今日は来ないって言うから、どうせならゆっくりしてから帰ろうかと思って」



ふふ、と小さく笑みをこぼした彼女は。

自分の元へ駆け寄ってきた穂の髪をよしよしと撫でて、ついでに抱きしめてやっていた。なぜ。




「あ、穂さんずるい……!

ルームのやつでも姉さんになかなかハグしてもらえないのに!」



……なかなかって。

そりゃまあ、こんな綺麗な人にハグされたら誰だって嬉しいだろうけど。なんてその様子を傍観していれば、「椿も抱きしめて欲しい?」なんて誘うように口角を上げる彼女。



「……俺彼女いるんで」



「あら、つれないわね。

……まあ抱きしめて欲しいって言われてもしてあげないけど。穂は、今日は特別ね」



頑張ったみたいだから、と。

不思議そうに顔を上げた穂を優しい視線で見つめる彼女に、ぶわっと鳥肌が立った。



なんで何も言ってないのに、ついさっき俺らの間にあった会話を、まるで知ったような素振りなんだよ。

いつも一緒にいる仲ならまだしも、まだ知り合って日が浅い俺らのことも、ぜんぶ"わかってる"。



もともとオーラがある人だとは思ってたけど、さすがに驚いた。

ただただ「凄い」の一言に尽きる。



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